ソーシャルコンテンツマネジメントのところでも触れましたが、近頃、Tech PopulismとかTechnology Populismと呼ばれる傾向について考えさせられる機会が増えているように思います。(Populismでは通りが悪いのか単にDemocraticという語を用いるケースも多いようですが)
テックポピュリズム、技術ポピュリズムという訳が良いのか、あるいはもう少し意訳的な試みをすべきなのか悩ましいところですが、要するに個人生活においてGoogleやfacebookに慣れているエンドユーザが、既存の企業システムの使い勝手の悪さを許容できなくなってきている、というお話です。
私個人は恐らく就職活動にはがきを使わなくなった最初の世代にあたると思います。採用担当者との連絡はもっぱら電子メールで、面接の際にもそういうったことが話題に上ることがありました。大学に入学した時にはWindows95の発売の直前で、つまり普通のPCにはTCP/IPスタックが搭載されていなかった時代(Windows95がでてもまだオプションでしたね)ですから、6年間の間にインターネットが完全に社会インフラとして定着したということを実感したものです。
当時、会社のPCおよびネットワークの環境に対して「自宅環境に比べて貧弱すぎる」という不満を持っていた人は極めて少数派であったと思います。(もしかすると私自身はそこに含まれていたかもしれませんが)。ブラウザやメーラはほぼ同じものを使い、ハードウェアはどちらかと言えば会社のものの方が高性能、専用の高価なソフトウェアもインストールされているかもしれない、という状況でした。
その後、その前提が大きく崩れていきます。1つにはセキュリティポリシの適用があります。会社側が設定する方針にしたがってセキュリティ対策を実行すると、PCの性能は落ちますし、USB外部記憶装置が使えないなど、利便性も損なわれます。パスワードの強制変更にストレスを感じることもあるでしょう。
もう1つが、GoogleをはじめとするWeb上の生産性向上ツールの普及です。GMailはデスクトップのメーラと比べても遜色しない使い勝手と、遙かに高いレベルの可用性や検索などの利便性を備えた上で「無料」です。一方で会社で新システムとして導入されるWebアプリケーションは、使い勝手の面でのGoogleレベルというわけにはいきませんし、ブラウザのアップデートに追随できないということも珍しくありません。セキュリティ等々のリスクがあることは頭では理解できるとしても、わざわざお金をかけて無料のものよりも使いづらいものを作って強制し、生産性が落ちていく状況を飲み込むのは結構なストレスであると思われます。
こうした不満による反動は、クラウドブームに乗じたセキュリティについての考え方の見直しとあいまって、Google AppsやSalesforce.comの採用という形で徐々に目に見えるようになっているのではないでしょうか。技術の成長スピードは速く、その多くが海外からやってきていることを考えると、後ろ向きなセキュリティ評価に手間取っているうちにどんどん外から置いて行かれることになってしまいそうです。とはいえ、セキュリティを完全に無視してよいわけがありませんので、何らかの評価手法を打ち立てる必要があるように思います。弊社でも既存のお客様のシステム投資案評価の支援などを通してこのあたりの課題の整理を進めて行くつもりです。
(文責 Ishii Akinori IT-Coordinator)
最近のコメント