前回、国際会計基準が定める企業結合会計は親会社説から経済的単一体説への転換がなされたということをみていきました。
今回はその他の改訂内容についても確認しましょう。その他の改訂点は公正価値による測定を一貫して行うように処理を定めたものであるといえます。
段階取得の処理
まず、段階取得の処理については過去に取得した持分の帳簿価額と公正価値の差額を損益とする処理が規定されました。過去に取得した持分が支配獲得時の公正価値により再測定されます。そのことで段階取得によって過去に取得した持分の価格がいくらであっても支配獲得時ののれんの金額が同じとなります。
従来は(日本の現行の処理も同じですが)過去に取得した持分の価格がのれんの金額に影響を与えていました。これでは過去の持分の取得の経緯によってのれんの金額が変わってしまうことになり、それが理論的でないというのが国際会計基準審議会(IASB)の主張です。段階取得でも一括取得であっても支配獲得時の公正価値が同じであればのれんの金額も同じであるべきと考えているのです。
偶発事象の評価方法
偶発事象については評価の方法が変わりました。従来偶発事象は引当金として処理されることになっていました。発生の可能性が高く、信頼性を持って測定が可能な場合に買収原価に含められていました。
改訂により、偶発事象も支配獲得時の公正価値で測定することになりました。企業結合では資産、負債を公正価値で測定するのが原則ですが、偶発債務だけ、「発生の可能性が高い」場合のみに認識するのは他の債務の認識と整合しないからです。非常に理論的ですが、実務上は偶発債務の公正価値をどうやって測定するのか、難しいところだと思います。
取引費用の処理
取引費用というのは企業結合取引に関連して発生した費用で仲介手数料、弁護士費用、デューデリジェンス費用などのコンサルティング費用のことです。これらの費用は被取得企業の公正価値に含めていましたが、改訂により発生時の費用として処理することになりました。
被取得企業の公正価値に含めないとした理由は取引費用の金額によって被取得企業の公正価値が変わってしまうのは取引の実態にそぐわないからです。そもそもコンサルティングなどのサービスは提供を受けたときに消費されているもので企業結合取引とは別個のものと考えています。確かにコンサルティングにお金を掛けるほど被取得企業ののれんの金額が大きくなるというのはおかしい話です。
(文責 Yumiko Noguchi)
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